2016年9月14日水曜日

新型NSX「NSXのネームバリューを無駄遣いしてまで売るクルマなのか?」

  ホンダの新型NSXがいよいよ日本でも受注が始まったようで、2370万円と発表されました。単純に初代と比べて2〜3倍に跳ね上がった!けど出力も2〜3倍!といった報道を見かけました。2000万円の二輪車の受注が好調だったホンダですから、四輪車はもっと高くなるだろうなーと思っていましたが、予想していたほどべらぼうに高価でもないようです。1990年頃と比べればこの手のクルマの扱われ方も大きく変化してきましたが、これではガキのオモチャどころかオッサンのオモチャにもならないですし、これはほぼ観賞用の『美術品』の域に突入してます。もちろんですが初代と新型ではユーザー層が大幅に入れ替わらざるを得ないことは想像がつきます。

  1988年の伝説的なF1連勝でホンダの名を世界に轟かせていた最中に、F1だけでなく市販車でもフェラーリなどのスーパーカーの既存勢力を完全に凌駕するモデルとして初代NSXは企画されました(そもそも1980年以降のフェラーリはスーパーカーブランドなのか?も怪しいけど)。始めてミッドシップを手掛けるメーカーとは思えない完成度。これもF1最強のエンジンサプライヤーだからこそ成せる技!?自慢のVテック搭載6気筒自然吸気は9000rpmまで回り、デザインでもまさかのフェラーリを圧倒!!!初代NSXのデザインはF355や360モデナのパクリだと稚拙な「ねつ造」をするライターもいますけど、初代NSXの登場が完全に早いですからね・・・。イメージ壊れるかもしれないですが、パクったのはイタリア側!!

  初代NSXは日本人が漠然と頭に描いていたスーパーカーへの憧れ、イタリア車へのコンプレックスを一夜にして吹っ飛ばした、という意味で間違いなく日本自動車産業における金字塔です。世界のユーザーに日本のスーパースポーツが受け入れられたという快挙と、フェラーリの聖域を土足で踏みにじった暴挙。多くの若者のマインドを開放したのは確かです。21世紀になった今でも盲目的にイタリア車やドイツ車には絶対に勝てないとか思い込んでいる「可哀相な」オッサンもいるようですけどね・・・。こんなこと言ってはいけませんが、そういうオッサンって大抵は読書量と経験が大幅に足りてないだけっていう情けない輩が多い。例えば牧野茂雄・著「ニホン車のレシピ」などを読めば、少しはクルマを取り巻く実情がわかってくれるとは思うのですが・・・。

  さて新型NSXに対して何が言いたいか!というと・・・もうお気づきだとは思いますが、これはまさに『逆行』です!!思考停止したオッサン達がイタリアのスーパーカーを『芸術品』として見るような、とてつもなく「しょーもない」ニホンの自動車文化は、幸いなことに初代NSXやスカイラインGT-RやRX7やランエボによって見事に破壊されました。そしてイタリア車にもドイツ車にも無い良さ。日本のスポーツカーが持つハイスペックなだら独特の繊細さが同居する究極のドライビングフィールが定義されていったはずでした・・・。若者が自分の運転に熱狂できる、真のクルマ文化が花開き、そこに「頭文字D」みたいな非常に解り易い『伝導』もあって確かなムーブメントを感じたはずだったんですけどねー。

  ニホンのスポーツカーに比べたら、ドイツ車なんて単なる鉄の塊です(論外)。イタリア車には無いフィールの緻密さ・・・どこまでもエアリアルな操作感。これに比べればイタリア車なんて実体の伴わない見かけ倒しの「花火」だと断言します。光と音のカーニバルですね。それはたしかに「芸術的」な価値があるのかもしれませんし、クルマ文化の中では異端だと完全には否定したりはしませんが、そんな滅多に乗らないで眺める対象のような異形のモンスターに、初代NSXが示した「あの時」の熱狂に勝るものが宿っているとは考えにくいわけですよ。金持ちアピールの道具である側面を取っ払ったら一体何が残るの?(貧乏人の僻みたいですね・笑)

  「白金」界隈ではBMWi8やガヤルドを日常の足にしている住人が結構いたりしますけど、ホンダなりにそういうニーズに新型NSXが合うという風に掴んでいるのかもしれません。だとしたら・・・車名をNSXでは無い「何か」にしてほしかったですね。初代NSXの偉業が全て台無しになってしまう!とは言いませんけども、せっかく日本のクルマ好きに「国産車」を誇るきっかけを与えておきながら、今度はNSX自体が『芸術品』に成り下がっていくというシニカルな展開をどう解釈してよいものか・・・(頑張って働いて買えって?)。

  2007年にGT-Rが発売されたときもちょっとササくれ立った空気を感じましたが、777万円ならなんとかなるかなー。そして10年経ってもまだまだ996万円〜。しばしば真剣に考えてしまうモデルです。もはや日本車独特の繊細とは全く意味が違うクルマですけども。アストンマーティンV8ヴァンテージ(1580万円)、マセラティ・グランツーリズモ(1625万円)といった10年前にデビューしたスポーツカーと並んでいつまでもラインナップしておいてほしいものですね・・・。

  さて2370万円!最新式のホンダNSX。当然にマクラーレン570やBMWi8よりも性能面で圧倒的に高いところに位置しているんだ!!!とホンダは声を大にして言いたいでしょうけど、残念ながら比較対象となる570もi8もほどほどに知名度ないですからねー。なんか未来的なデザインで、いろいろな駆動力を発揮するというとても「ゆるーい」共通点でグルっているのかもしれないですけど、若者がコレに乗りたい!って仕事を頑張りたくなるタイプでも無いと思うんですよね。例えばi8が欲しいって言っているヤツって、大抵は田舎モンで世間知らずなタイプが多いかも。決して悪いヤツじゃないですけど。

  はたして新型NSXは『白金』でそこそこ売れるのかな。たとえ個人向け販売がコケた(全くの無風だった)としても、ホンダはグループの力を駆使してカーシェアリングの関連会社でも立ち上げて、在庫を横流しすればいいのかな(受注販売だけど)。試乗車が売れ残ったとしてもどうにでも出来るといった呑気な出口戦略が見え隠れしています。個人向けには売れないかもしれないが、「未来的」なデザインで目立つ少々特別なスペシャルティカーはいくらでも利用価値あるでしょうね。六本木・赤坂界隈では週末ごとにやたらバブリーなリムジンハイヤーが元気に稼働していますし・・・東京も世界の大都市の例に漏れずバカ丸出しな側面がやたら目立ってきました。

  北米製造の逆輸入モデルだからアメリカ価格よりもかなり割高とのことですが、最初から「貸す」クルマを考えているならば、2370万円という価格設定もいくらか合点がいきます。「買うクルマではなく借りるクルマ!」なんて買えない人のひがみにしか聞こえないかもしれませんが、いったい日本中のクルマ好きの何人が2500万円で好きなクルマ買えと言われて、この新型NSXを選ぶのでしょうか?なんでホンダ?なんでAWD?なんでHV?なんであのデザイン?なんであのインテリア?なんで?

  ポルシェ、日産、ホンダが次世代スーパースポーツはハイブリッドが主流なんだ!と、既成事実を作ろうとしていますが、それはエンジニアリングのパラダイムに過ぎません。例えばアメリカには無名のスーパースポーツのメーカーが幾つもあって1000psオーバーのクレイジーなワンオフモデルを、クレイジーなスピード狂に適度な価格(10万ドル前後)で提供しています。それでもガソリンエンジンによるドラッグカーみたいなクルマがアメリカ以外の地域で受容されないのは、これらがクルマとしての商品性を欠いているからだと、某有名ライターが看破してましたねー。

  初代NSXのような限りなくピュアで、どこまでも美しいスポーツカー・・・これこそが、人々の琴線に触れ、他のメーカーの開発者を突き動かし、需要と供給がスムーズにシンクロする。そして次々と理想的なスポーツカーを培養する環境。クルマ好きが心から望んでいるカーライフはそういう場所だと思うんですよね・・・。ホンダは初代NSXを愛する全ての人の期待を大きく裏切ってくれたと思います。できればS2000を愛する人々に悲しい思いをさせるのは勘弁してほしいなーと思う次第です。


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