2016年2月17日水曜日

アウディA4 「実は・・・◯◯なクルマを返上!?」

  日本でのアウディの人気はどうもここ数年で下降気味です。ターニングポイントになってしまったのは、尖閣問題などで日中関係がゴタゴタになり、その中で不幸にもアウディが反日デモに協賛した!として「反日ブランド」として名前が上がってしまったことがきっかけだったと思います。なんで「国際問題」と特定の「自動車ブランド」が結びついたかのような報道が日本でされたのか(BPO入りか)? まずはここに大きな「闇」があるように感じます。なぜあの時にアウディが悪者にされて、トヨタの社長が英雄であるかのように讃えられる展開になったのでしょうか・・・。

  振り返ってみれば、「ハイブリッド黎明期」に巻き起こったトヨタvsホンダによる「HV1号機」戦争の際も、メディアによってトヨタの方が圧倒的に優れているかのような一方的な報道が繰り返された結果・・・ホンダがボロボロに負けました。また最近ではグローバルでの生産台数でVWがついにトヨタを追い越すかの勢いを見せたときに、不思議と巻き起こったのが「VW問題」で、とりあえず北米での事例による当事国ではない日本のメディアが過剰なまでにVWを叩きました。・・・さて一体誰がメディアを操っているのでしょうか!?

  そんなメディアの暴走による「受難」の時期を経て、すっかり色褪せてしまった「アウディA4」(旧アウディ80)シリーズ・・・。日本人デザイナー・和田智さんが手掛けて、一時代を築いてきたアウディのトータルデザインも、いろいろなブランドにエッセンスをパクられ続けたせいもあるでしょうが、現行デザインのアウディ車は良くも悪くも、見た瞬間に頭の中で「これはアウディ・・・」と認識するまでにちょっと時間がかかったりします。夜間に前を走るクルマのテールランプの配列を見て「これは・・・?BMW?アウディ?」と迷っていたら、なんと現行クラウンロイヤルでした・・・。「あのクルマはなに?」って助手席の彼女に聞かれたときにアウディっぽい「テールランプ」の場合はハードルが高く、かなりの確率で車種をはずしてしまいます。

  新型になったアウディA4クワトロですが、本体価格で600万円〜(FFモデルは400万円台〜)。富裕層でも無い限りは、購入に向けてはそれなりの気合(買うべき理由)が必要な価格です・・・、もちろん同価格帯には興味深いクルマがたくさんあります。メルセデス、BMW、ジャガー、レクサス、キャデラックの各ライバルモデルもありますけど、それ以上に興味深いのがポルシェのエントリーグレード車であるとか、レジェンド、フーガといったワンクラス上のフラッグシップセダン。ロータスやアルファロメオのハッピーなスポーツカーなどなど。ちょっとマニアックなところではマークXの「スーパーチャージャー仕様」にモデリスタの「フルエアロ」を組むというのもあります(なかなかニッチなトヨタ版「M3」では?)。

  それに対してアウディA4の魅力って何だろう・・・。アウディ80の時代から数えて9代目。なかなかの歴史を誇ります。スカイラインやらカペラ〜アテンザやら日本車にも長い伝統のモデルはありますけど、やはり長きに渡って欧州で人気を保ち続けたという意味では、BMW3シリーズと並んでこのクラスの王道モデルといっていいです。初代(B1系)が登場したのが1972年だそうで、この頃はまだまだアウディも大衆ブランドの色合いが全開です。1995年の5代目(B5系)からアウディA4となりボディラインが優雅な丸みを持ちはじめます。

  ケン・ローチ監督の強烈な社会派作品として知られる「ルート・アイリッシュ」に出てくる主人公が乗っているクルマがこの「B5系」でした。公開は2010年(日本では2012年)ですので、退役したアル中の軍人が地味に乗ってそうな「型落ち」のアウディA4といった設定になっています。B5系A4のそつない存在感は、親友を謀殺した民間軍事会社の役員を徹底的に追いつめる主人公のストイックなキャラクター(鉄の意志)にも上手くハマっています。また劇中でも何度となく登場して、さらに主人公が乗り込み理解者を突き放すようにカッコ良く発進するシーンなどもあり、監督自身がこのクルマが好きなんだな・・・と感じます。ちなみにこのクルマの愛好家として知られるのが同じ映画監督の宮崎駿さんで、「千と千尋の神隠し」のオープニングで家族のクルマがアウディなのはこれが理由だそうです。

  この「ルート・アイリッシュ」ですが、実はクルマ好きには堪らないくらいに、いろいろなメーカーのクルマが登場します。いつぞやの「007」のように主人公がアストン(ヴァンキッシュ)で、敵がジャガー(XKコンバーチブル)・・・と完全にフォードグループの新型モデルと「コラボ」企画なんてことはなく、主人公が抹殺する悪役のクルマは全てSUV・・・BMW、ランドローバー、メルセデス(最後に爆破される)。アウディが正義でライバルメーカーが敵なのでやっぱり「コラボ」かな? BMW5シリーズに盗聴器を仕掛けるシーンにはなぜかその手前に「ポルシェ996カブリオレ」が。あとVWゴルフが1台だけ正面向いて(他のクルマは後ろ向きなのに)止まっていて、やたら目立つ・・・。それでもヒロイン(ヒステリックだけど慈愛に満ちた魅力)はミニに乗ってましたね。

  この5代目みたいなアウディA4に逆戻りしないかな? 確かに映画のクルマってカッコ良く見えてしまうものです。「トランスポーター」のBMW7シリーズ(E38系)や、「タクシー」のプジョー406などなど。1990年代のモデルはいいですね!この頃は日本車の性能がすごかったけど、欧州車のデザイン(特にドイツ車)が冴えていたと思います。この頃ならば、マセラティ・クワトロポルテよりも断然にBMW7erがカッコいい!!! クリス=バングルが悪いとは思わないですけども、2000年代に入ってからはBMWのクルマに溌剌としたところが感じられなくなり、あっさりとクワトロポルテが追い越していきました(ピニンファリーナ・奥山清行デザイン!)。

  アウディA4に話を戻すと、このクールで魅力的なB5系以降は、BMWと同じで2000年代になって中国マーケットを意識し過ぎるあまりにかなり迷走したように感じます。いくら東アジアの気候に順応させるためとはいえ、ハイブリッドでもないのにFFモデルにCVTを組み合わせたりしたのは、走りに魅せられたファンを無視した暴挙だったと思います。さらに先代モデルに関して言えば、プレミアム車の「根幹」と言える足回りがタイヤを含めて中国・韓国のサプライヤーを採用するようになっていて、タフな演出をするクワトロのワイドなタイヤが、どうも乗り心地にとって仇となる「煮詰め不足」の見切り発車となっていました。

  ワイドなタイヤを廉価に作るハンコック(韓国)の採用は、もはややめられない(時代の流れ)ようで、新型にも使われています。いまではBMWの非ランフラットモデル(アルピナかM)以外も同じくハンコックタイヤです。特にMスポの後輪はワイド仕様なので・・・。Mスポもそうですけど、先代アウディA4は「実は・・・クラス最低の乗り心地」なんですよね。諸外国と比べて繊細な日本人のユーザーはこの辺を見逃したりはしませんから、先代モデルが3シリーズやCクラスに販売面で遅れをとったのも当然のことだったと思います。

  アウディによると、新しいプラットフォームを採用した自信作なんだそうで、新型プリウスよりも高い価格帯で、日常使用から長距離用途まで使えるなど、価格相応の活躍の幅はありそうです。ドイツ車の哲学という名の「メーカーの事情」を振りかざしただけのミドルサイズ・プレミアムセダンではなく、日本車・アメリカ車・韓国車との相互理解のど真ん中に位置する「クラスター(核)」的な存在を目指すようです。

  プレミアムブランドはしばしばライバル関係で語られて、機械の評価という意味での「現在地」をカーメディアに探られないように、カネをばらまいたりします(だから車両価格が高いの?)。実際のところ、非プレミアム系のミドルセダンは、それぞれに存在感を出すために「長所」が用意され、例えばカムリHVだったらデビュー当時はデザインや乗り味において他のトヨタのHVよりも優れた内容でしたし、アコードは同クラスのモデルで最高の燃費を叩き出しつつ高級な乗り味という意味で目的を達成していました。

  それがレクサスIS、BMW3er、メルセデスCクラスになると、なんとも意図がわかりづらいです。レクサスISに乗ると、やたらと3erを意識してコピーしている感じしかしないですし、3erはというと・・・乗り味はマークXかクラウンに近い。Cクラスはマテリアルの質感重視で、走りの質は二の次。ハンドリングもアクセルフィールもダルい。エンジンもユルい。・・・「プレミアムカー・シンドローム」とでも言うべきでしょうか。LS、7er、Sクラスと「同じブランド」であることがこれらのクルマの主たる価値であって、それを連想するようなデザインと調度品をそろえることばかりに神経が行っているのでは? 「軽快」なスポーツサルーンなんて完全に過去の話ですね。

  アウディA4はこれら3台とは別路線を行くクルマになっていると信じたいです。「ゴルフ7」、「アクセラ」、「プジョー308」、「プリウス」など、特にCセグ車がそれぞれに「ライフスタイル」をテーマに上質で使い勝手が良いクルマを目指して進化しているのをこの数年の中で見届けました。それぞれのモデルにはメーカーの意図が強く反映されていて、このクルマを世界のクルマ文化の中心へ送り出す!という意欲・執念は間違いなくあったと思います。これらの新世代CセグがすでにDセグを越えるポテンシャルを持っている!とは言いませんけども、これまでもっとも大きく開いていた「スモールカー」Cセグと「ミドルサイズ」Dセグの差がかなり縮まったのは確かです。簡単に言ってしまうとCセグの進化に比べてDセグの伸び悩みが顕著ということです。

  「プレミアムカー・シンドローム」・・・サービス業の実態を考えると、当然に起こりうる事象ではあります。中国向けに需要が延びているプレミアムカーゆえに手を加えなくても市場が勝手に拡大するわけですから、開発そのものがブランド横断的に停滞するのはやむを得ません。そんな現状を打破しようと動くのは、中でももっとも苦戦しているメーカーです。皮肉なことに最も早く中国市場に根を張ったはずの新型アウディA4からそれが起こるのでは? 先ほどのCセグ車のようにプラットフォームから徹底的に見直したという大改革の先にどういう進化が始まるのでしょうか・・・。



リンク
最新投稿まとめブログ


  

  

  
  

2016年2月9日火曜日

スズキ・イグニス 「このクルマは全国区になれるか?」

  手頃な価格のコンパクトカーを出せば、とりあえずそこそこは売れる!・・・なんてそんなに甘い時代はとっくに過ぎ去ったようで、国内メーカーから出されているコンパクトカー(Bセグ)でよく知られたモデルは、どれもとても良く企画が練られた力作ぞろいになっています。代表的なモデルを挙げると、ヴィッツ、パッソ、アクア、フィット、ノート、デミオ、スイフトといった面々ですが、どれも「世界屈指の名車」と断言してもいいくらいに粒ぞろいです。

  意外に知られていないことですが、日産ノート以外はいずれもグローバル車となっていてそれぞれに欧州や米国で非常に高い評価を得ています。またノートにしても欧州で人気のルノー・クリオ(ルーテシア)と共通の設計で、「直3」エンジンを日本向けに静粛性の高い「直4」に換装するなどなかなか手の込んだ逸品です(パッソはダイハツ・シリオンとして欧州で販売)。フィットやアクアはアメリカ市場で勝負する「メジャーリーガー」です。デミオ、スイフトはドイツ市場での評価が高い欧州テイスト車です(なのでカーメディアに受けがいい)。

  これだけの陣容ですから、まさに鉄壁を誇っていて、輸入車に対してはあまりにも「脅威」すぎる強さです。そういえば、10年くらい前には「もはやBセグは日本で作っても儲からない!」と、経営コンサルタントだか経済アナリストだかが、まるでMBAの教科書に載っている「常識」かのように語っていましたが、Bセグも軽(Aセグ)もいまだに立派に「国内生産」が商売になっているんですよね。彼らの意見に乗っかるように海外組み立て車として導入された三菱ミラージュと日産マーチですが、こちらは価格の割に全然売れてないようです。タイ生産車でもちゃんと自動ブレーキだって装備されているわけですが・・・。三菱、日産の現場を無視した大卒・官僚主義を、トヨタ・ホンダ・スズキ・マツダの高卒叩き上げが撃破する!!!これこそが「ものづくり」ってやつですね。

  高級車と違ってコンパクトカーには誰でも見てわかりやすい付加価値が少ないです(盛り込みにくいです)。限られた製造原価に抑えることを考えれば、不必要な豪華装備はことごとくオプションへと回されますし、オプションを目一杯積み込んでもせいぜい250万円以内に収まるようにしないと、コンパクトカーとしての価値は無くなります。その中でユーザーに選んでもらう為に何をすべきか? 例えば欧州市場で一般に見られる売り方が、WRCに参戦するといった「ストーリーの構築」です。日本でもランエボ、インプがWRCをきっかけに世界的な人気を獲得しましたが、今ではWRCはBセグ車で競われる時代になりました。VW、シトロエン、ヒュンダイなど欧州で生き残りをかけるブランドが相次いで参戦していますが、トヨタもヤリス(ヴィッツ)で2017年から参戦する意向だそうです。

  実際のところWRCの注目度が低い日本市場では参戦をPRしたところで、大きな期待はできないでしょう。・・・ゆえに日本でコンパクトカーを売るには、
①地道に快適なクルマへと育てる。
②ブレイクスルーを起こす。
③CMで人気のタレントを使う。 
これらを手を抜かずにやり続ける必要があります。

    ①で成功している事例として挙げられるのが、スズキ・スイフトでしょうか。クラス最良のドライビング・ファン、そして小排気量でも妥協なく回る優秀なエンジン・・・小型車の巨人・スズキらしい傑作車だと思います。

       ②に当てはまるのが、HV搭載&グッドデザインで大ブレークした「トヨタ・アクア」と、Bセグにディーゼルという掟破り&グッドデザインで大きな話題となった「マツダ・デミオ」です。

       ③の例としては、嵐の二宮君を最初から使い続けている日産ノートがとても上手くやっていると思います。あとタレントは出てこないですけど、ホンダ・フィットのCMは非常にメッセージ性が強くて、クルマ好きは思わず心が掴まれてしまいますね。個人的にかなり好きです。

  さて今回新たにこのクラス(厳密に言うとAセグですが)に追加された「スズキ・イグニス」は、果たして日本市場に定着して根を張ることができるでしょうか? 全車マイルドハイブリッドを搭載していて最も下のグレードの2WD車は28km/Lを実現。高効率Vテック&CVTで燃費スペシャルとなっているフィットの非HVが26km/Lなことを考えるとかなりの水準にあります。もちろんアクアやフィットHVは35km/L以上といった水準で争っているわけですが、「イグニス」の素晴らしい点は、マイルドハイブリッドを搭載しても尚、フィット(非HV)やヴィッツと同じくらいの価格を実現しているところです。140万円クラスのコンパクトカーではもっとも優秀な燃費と言えます。

  これだけでも本来ならば、立派なブレイクスルーになると思うのですが、残念ながら「イグニス」には、アクアやデミオのように一目見た瞬間から「これは売れそうだ!」といったデザイン面での好感触がやや希薄です。おそらくこのクルマを見た人の多くが、旧共産圏で売る予定のクルマをそのまま日本に持ってきたのでは?という印象を持つのではないでしょうか。スズキの意図としては80年代の古き良き日本の小型車に見られたデザインを随所に取り入れたと思われますが、フロントは最新の流行に合わせつつも、リアのデザインは・・・斜め後ろから見ると1981年発売のスバル・レックスあるいは同時代のキャロルやスターレットに似たクラシカルな風情。なんだかぎこちないデザインに感じるのは私だけでしょうか?  ・・・このクルマの売れ行きに注目したいと思います。


リンク
最新投稿まとめブログ