2016年1月21日木曜日

スマート・フォーフォー 「抜群の競争力はプリウス以上のインパクト!」

  メルセデスで知られるダイムラーグループが展開するコンパクトカー・ブランドが「スマート」です。一般に「コンパクトカー・ブランド」というとスズキやダットサン(ルノー日産)のように、インドや東南アジアを目指したクルマ作りをしている印象がどうしても付いてきます。このスマートもいずれはそういう展開になる予定かもしれないですが、現在のところは主な市場としているのが、ドイツの近隣の古い街並が広がる厳しい道路事情の欧州各国です。実際に統計を見てみるとイタリアなどで高いシェアを獲得していたりします。

  イタリアといえばフィアット500やパンダなどグッドデザインなコンパクトカーが量産されるお土地柄です。日本にはまだ展開されていない各ブランドのAセグ車いくつも投入されていて、そこでは日本やドイツとは一風変わったクルマの価値観が広がっています。例えばトヨタのiQをカスタマイズしたモデルを、アストンマーティンがオーナー限定に供給したり(もちろん街乗り用です)、「日本の軽自動車こそが頂点!」といって、並行輸入した三菱だかどっかの軽自動車を愛車にしている有名なスーパーカー・デザイナー(ランボルギーニ系だったかな?)もいるそうです。イタリア人は日本の「軽」が好き!と書かれている本もありますし、イタリアでも販売されているスズキ「アルト」の新型は何やらイタリア車のような佇まいですね。

  レクサスも2015年の秋に行われたフランクフルトMSで、市販予定のコンパクトカー「LF-SA」を発表しましたし、BMWも既に「i3」という日本でもおなじみのEVコンパクトを展開しています。またBMW傘下のミニもイタリアではなんと毎月2000台近く(日本市場のほぼ2倍)も売れています。

  日本では軽自動車が税制面にあぐらをかいて、特にシビアな価格競争をするでもなく、かといってデザイン面で大きく進化するでもなく、失礼ですが「ぬくぬく」の状態のままで高齢者向けにシェアを伸ばしています。売れていること自体は否定しませんが、より多くの人に感じてもらえるような「いいクルマ」へのこだわりだったり、クルマそのものが鑑賞の対象となるような「趣味的」な意味での文化の広がりはあまり感じられません。まあ手軽な改造でレースを楽しんでいる人はそこそこいるようですけど。

  日本もイタリアに似ていて山がちで狭い国土なのだから、コンパクトカーであることが「アドバンテージ」であって、そのサイズのままに魅力的なクルマ作りがもっと広がってくれればいいとは思うのですが、バブルの価値観というべきか、アメリカ的な消費行動というべきかわかりませんが、なかなかコンパクトカーに意識が向きにくい(高い価値を感じない)ようです。しかしこれからは、イタリア向けに洗練された各ブランドのコンパクトカーが日本市場でもブレイクしてくる可能性がありそうです。

  すでに「フィアット500」と「ミニ」はわかりやすいデザインで多くのファンをすでに獲得していますが、さらに近年に新しい波として押し寄せた「VWアップ」と「BMWi3」はやや不発に終わってしまいました。「アップ」に関してはデザインが日本人好みではなかったのかなと思います。そして「i3」はデザインに関してはかなりいい線いっていたのですが、500万円という法外な価格設定と充電設備への投資など、手軽に試すにはいろいろハードルが高かったようです。今後はカーシェアリングなどで浸透を図るようですが、車両価格をもっと抑えられないと商用利用でもさらに広がるのは難しいでしょう。

  新型のコンパクトカーにとって「デザイン(世界観)」と「コスト」この2つを高いレベルで両立させることが、日本市場を攻略するために課せられた絶対条件なのですが、これを軽く越えてきそうなモデルが、新たにスマートから登場しました。先代までのモデルは三菱車をベースにしていて、日本メーカーのベースグレード車をスマート用にカスタマイズしたものだったのですが、既に発売されている現行「フォーツー」(2シーターモデル)と新たに追加された「フォーフォー」(4シーターモデル)は、ルノーと共同開発された専用シャシーを使っています(ルノーからも近々トゥインゴとして発売されます)。

  新設計のシャシーは、あのスバルの名車サンバーを思わせるようなリアエンジンの後輪駆動(RR)設計になっています。サンバーは「田園のポルシェ(911もRRだから)」と呼ばれ、軽トラ&軽バンのボディに似合わない走りが熱い!・・・という伝説だけが勝手に一人歩きしてしまっているようで少々やっかいです。実際はドライバーが座る位置はホイールベースのかなり前方になるので、スポーツカーと表現するのはやや違うのではないかと・・・。

  それに対して「スマート・フォーフォー」は前輪と後輪のちょうど中間に着座できますから、コンパクトカーとしての使い勝手をしっかりと押えた上で、「コンパクト・ポルシェをいう称号をを堂々と名乗っていいクルマだと思います。エンジンも日本の軽自動車の規制(64ps)されたものよりも、強力な1Lターボが積まれていて、それでも価格はコペンやホンダS660と同じくらいに収まっています。

  軽自動車の上級モデルだと今では平気で180万円くらいするので、それを買うつもりならば、この「スマート・フォーフォー」(209万円〜)も十分選択肢に入ってくるのではないでしょうか? 日本のコンパクトカーではいまだに上級グレードにしか付かないオートエアコンが標準だったり、229万円に抑えられているプレミアムモデルなら本革シートになったりと、全くユーザーに損をさせるつもりがないシビアな価格設定には好感が持てます。

  確かに「メルセデスが買えない人が乗ってそうでみっともない!」といった偏見もあるかもしれませんけど、まあ自然に考えてあくまでセカンドカー需要が前提です。フーガとかランクルとか乗っていると、街中で停められる駐車スペースを見つけるのもひと苦労だったりしますから、セカンドカーとしてこれ1台あると便利ですし、ツインクラッチで軽快に走る乗り味で、大型車とはだいぶ気分も変わってとてもいい感じだと思いますね。フィアット500やミニだとキャラクターもありますけど、騒音の抑え込みが甘いので、冷静に判断すると「実力不足」なんですよね(あくまで好きな人が乗るブランドですね)。それに対してこの「フォーフォー」は、4気筒NAを積むデミオやノートにも十分に対抗できるコンパクト基準でのクラストップ水準の「高級感」を持ち合わせている点も魅力です。

  もちろん最近調子がいい「ルノー」の兄弟モデルの発売を待ってからゆっくり決めたらいいでしょうし、もしかしたらスマートからもラインナップの追加で、より高い趣味性が発揮されるオープンエア・モデルなんかも出てくるかもしれません。また運転が好きでたまらない人ならば・・・MTモデル来い!という要望もあるでしょう(ルノーはMTか?)。とりあえずベースモデルで209万円ですから、日本市場のガチガチに閉じた扉をこじ開けるくらいのインパクトはあると思います。今後の展開に注目したい一台です。

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2016年1月19日火曜日

トヨタ・プリウス 「買わない理由が減りつつある!」

  「近頃の若いヤツは平気でプリウスを買うからな、俺の若い頃はさ・・・」といったクルマ好きのオッサンの定番のセリフが、いよいよ通用しなくなる日がやってきた!? 新型プリウスが想像していたよりもずっといいですね

  試乗の時の「ファーストインプレッション」は実際に買うかどうかにおいて非常に大事です(私にとっては)。といっても外観デザインがどうということではなくて、実際に運転席に座ってドアを閉めた瞬間のフィーリング(空気感)です。このフィールって開発設計者のこだわりがもっとも出るところだと思うのですよ、ここでいいフィールが得られないクルマは、言葉が悪いですけど、「投げやり」に作られていると思います。そしてこのフィールが「いい」クルマってやっぱりハズレが無いんですよ(断言します)。エンジン掛けなくても、このフィーリングだけでだいたいクルマの出来がわかる! 今乗っているクルマもエンジン掛ける前に「これ買おう!」って決めてましたから! 

  そしてまさかのまさかですけども新型プリウスの「フィール」がすこぶるいいわけですよ! これにはビックリ! 過去に乗ったトヨタ&レクサスのクルマからは想像できないくらいにいい。さらに言うとVWゴルフ、メルセデスCクラス、BMW3シリーズ、スバルWRX S4といった多くの人気モデルにも決して劣ってないですよ。現行モデルでプリウスよりもいい味出していたクルマって何かあったかな?ってくらいです。スカイラインとマスタングとボルボS60/V60と・・・あとはアテンザ?それとジャガーXEもあるかな。とにかく数えるほどです。

  ここ数年の内に「86」やら「レクサスRC」やらを手掛けて、なかなかの評価を獲得してきたトヨタですが、これら一連の2ドア車の発売によって、「その気になればどんなクルマだって作れる」ということを改めて証明してきました。その流れに乗ったかのように、このプリウスの設計も「0から」やり直した!と自ら豪語していて、ものの見事にBMWみたいな乗り心地になってますね(またパクリかい?) 。・・・プリウスの従来のイメージからは全く予想外しなかったことが、現実に起こってしまっているんじゃないか? なんて軽くショックを受けた次第です。とりあえずプレミオに乗ってる実家のお袋には絶対に勧めておきたい1台になってました。おそらくVWやBMWから乗り換えても違和感ないですよ。

  例えば今時珍しいピラーレスドアを使うトヨタ86のドアは、機密性を上げる為にドアが閉まった際にウインドーが「ずしん」と動きます。もちろん車体剛性が高くてゆがみにくいボディがあって、ドアが締まる角度がズレないだけの十分な剛性をヒンジに持たせていたりとか、あれこれ「巧みの技」と表現すべきギミックが組み込まれています。これってBMW7シリーズだったりホンダ・レジェンドくらいの最先端満載の高級モデルにちょこんと付いている、非常に価値の高い技術だと思います(なんで同時期に開発されたレクサスISのドアは凡庸なのか・・・理解に苦しみますが)。

  それと同じように、ドアだけで他のモデルと(ある程度は)差別化できるギミックがプリウスにも付いてますね。もちろん86と同じようなピラーレス専用の機構とはまるっきり違いますが、とりあえず感心します。もちろん「プリウス」に対する当初の期待度が低かったというのもありますけども、やはりレクサスIS(F30BMW3シリに似てる)の軽くてパタパタしているドアよりもずっと好感が持てる作りになっています。レクサスIS=女性向け プリウス=男性向けといった作り分けが意図されているのかな。

  誰の目にも明らかですが、トヨタのほとんどのラインナップにHVが設定されるようになって、プリウスの「存在意義」が重要になる局面ではあります。ミニバン、コンパクト、SUV、セダン、ワゴンに至るまで揃っている中で、リッター40km越え!の「最適化されたHV」というだけで訴求できるほど市場はプリウスにとって甘くはないはずです。トヨタも自然とプリウスに何らかのキャラクターを持たせようと動いたようですが、その答えが・・・現在のトヨタには無い(印象が薄い)ジャンルを目指すということだったのだと思います。単純に言ってしまうと、トヨタのラインナップは国内専用車が多いわけですから、グローバルで競争力があるクルマに仕上げれば個性は出せるということになります。

  日本やアメリカではすでにプリウスは広く認知されていますが、欧州ではその知名度はイマイチです。そこでトヨタは「TNGA」という新しい開発規格をプリウスに採用しました。これは欧州で人気が高いVWやPSA、マツダが相次いで投入してきた設計方法に似ていて、ブランド内のほとんどを網羅する汎用性の高いシャシーを開発することで、各部の作り込みにボリューム(ブランド全量)を持たせて、全体の質感を向上させるのが狙いと言われています。実際にこの規格で作られたゴルフやプジョー308、アクセラなどは、いずれも欧州市場を代表するクルマとして高い評価を受けています。

  VW、PSA、マツダがそれぞれにグループの開発資金と人員を大量に投入して、ブランドの根幹として20年使えるシャシーを作ってしまおうというビジョンを掲げているだけあって、Cセグ(スモールカー)に有りがちな、気密性の低いキャビンだったり、車体の安っぽさからくるがたつきによってフラットさが失われたり、などといった欠点がかなり覆われている印象が得られます。タイヤとダンパーの組み合わせからくる乗り心地(固さ)に関しては、いろいろ意見があるようですが、とりあえず間違いなくクルマの総合力は上がっています。

  トヨタが「TNGA」を構想する中で、VWやマツダなどかなりの台数を分解してきた結果なのでしょうか? 新型プリウスは見事なまでにドアやシートの質感がこの両ブランドにかなり近似してきました。それってつまり「アクセラHV」じゃん・・・しかし、トヨタの特徴であるインテリアの空間の作り方などは健在ですし(アクセラは圧迫感が)、日本の凹凸が少ない道路で心地良く走る「やわらかい」乗り味もまた、マツダとはだいぶ違う趣きがあります。どっちが好きかって? 実はアクセラの乗り心地は個人的には全くいいとは思っていません。どこかアテンザからの「引き算」を感じてしまう点も寂しい限りです。現状では新型プリウスの方がいいと思います。

  くどくどと「初期衝動」のままに新型プリウスについて書いてみました。トヨタのクルマ作りの大きなターニングポイントになる!という触れ込みは間違ってないと思いますし、他のメーカーからしてみたら「破壊的」「衝撃」「大ボス登場!」だと頭を抱えてしまうようなクルマかもしれません。プリウス乗ってみて欲しくなったのは初めてですし、もし縁があれば購入することもありそうな予感がします。今後もこのクルマについて注意深く見守っていきたいと思います。


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