2015年6月28日日曜日

VWゴルフR420 「これはカーメディアにウケが良さそうだ」

  毎月のようにクルマ雑誌に躍る「◯◯◯おまえもか!」という文字に少々ウンザリです。最近の例でいうと「ジャガーおまえもか!」「マセラティおまえもか!」「ベントレーおまえもか!」「ランボルギーニおまえもか!」そして「アルファロメオおまえもか!」・・・。これらの各ブランドは近々プレミアムSUVを導入するそうですが、「おまえもか!」ってことは不満タラタラなんですね・・・絶対にSUVが嫌いとは書けないでしょうけど、気持ちがこもってます(笑)。そんなクルマ雑誌のライター達も「BMW X5」や「ポルシェカイエン」のレビューとなると、歯の浮きそうなおべんちゃらを散々に使っていて・・・。

  これもカーメディアに生きるものの宿命とはいえ、本心とは全く違うことを延々と書かなくてはならないのはツライと思いますね。SUVが好きではない(というか嫌いな)のに、新型車はどこもかしこもSUVばかり・・・。しかもメーカーの鼻息は異様に荒く、下手なことが書けないですし、全くアガらないテンションを押し隠して書かなければ次の仕事はない。出版不況が吹き荒むなかでイヤイヤな苦行が、これからも続くのかと思うともう気分はヘロヘロじゃないかと思います。できることならユーザーの好みが突如劇的に変わってSUVブームが一気に下火になってくれないかな? そしてそんな風潮を作ってくれるスゴいクルマが出てこないかな〜・・・なんて待望する雰囲気をクルマ雑誌のあちこちから感じますね・・・。

  そんな憂鬱な毎日を過ごしているであろうカーライターの気分が、少しは晴れそうなモデルが、意外や意外のVWから登場したようで、秋にも日本に導入されることが決まっているそうです。VWと言えば堅実な作りの「ゴルフ」と、レトロな復刻モデルになる「ザビートル」など、日本のユーザーの心を掴むクルマをラインナップしているなかなか素晴らしいブランドです。しかし正直に言いますと私はVWがあまり好きではないです。このブランドが日本でも高い支持を集める理由は、他でもないトヨタやホンダに迫るレベルで相応に合理的なクルマの設計をしているからだと思うからです。「トヨタ=ホンダ=VW」という意味でVWは称賛に値しますが、私はトヨタやホンダを買わないのと同じ理由でVWにも距離を感じています。

  私たちは日本車に囲まれて生活していてそれが当たり前になっていて、トヨタやホンダのスゴさがメディアで正当に評価されることを目にする機会もないです。しかし世界の自動車メーカーと比べてもこの2社の合理的なクルマ作りは、圧倒的な地位にあることも十分にわかります。トヨタやホンダがアメリカだけでなく、欧州でもかなりの信頼と羨望を受けているブランドだという話はたくさん聞いたことがありますが、ちょうど同じように合理的なVWが、逆に日本でチヤホヤされるのと同じ構図なのだと思います(ドイツではVWは普通のクルマ)。

  もちろんトヨタ、ホンダ、VWが同じようなクルマを作っているという話ではないです。しかしこの3社はどんな困難な経済情勢に巻き込まれても、政府や他社の支援など必要とせずに独自の体力だけで生き抜いてきた数少ない自動車工業の雄であり、この3社の逞しい背中を見てBMWグループやダイムラーグループも合理性を取り入れたクルマ作りに軸足を移しています。そしてどこぞの自動車グループの傘下にある高級ブランドでも現実的なSUV作りが広がっているわけです。

  しかし行き過ぎた合理性は、大きくクルマの魅力を削ぐ結果となり、トヨタもホンダも慌てて「86」「RC-F」「S660」「シビックtypeR」「新型NSX」といったモデルを投入してきました。少しも揺るがない頑強な合理性を持つ強いメーカーが、改めて世界のクルマ好きへメッセージを発信することで、私達はこれからも長く楽しいクルマを選ぶことができるんだ!と少々ホッとするところがあります。某国産メーカーが突如3ローター&ターボの超絶スーパースポーツを1000万円で発売したら、このメーカーは全く懲りないな・・・と呆れてしまいますし、ロータスやマクラーレン、ケーニッグセグが10年後も存続していると信じる気持ちにはなれないです(ボルボもジャガー=ランドローバーもアストンマーティンも!)。

   トヨタやホンダと同じ「合理主義」を社是とするVWも同じ世界に生きているわけですから、当然というべきかクルマ好きへのメッセージのこもったモデルを作ってきました。「VWゴルフR420」は、2Lターボを420psまで引き上げてその出力に耐えられる構造で横置きエンジン用のミッション(7DCT)をわざわざ新造して市販化に漕ぎ着けたようです。「直4ターボの横置き」「AWD」というとすぐに「ランエボ」が思い浮かびますが、ちょうどランエボ終焉の時期に登場したこともなんかの因縁を感じます。もしかしたら細部で使われる機構のライセンスに関する契約が三菱とVWで締結されているのでは?と・・・。

  さてクルマ雑誌にウケが良いと思われるこの「ゴルフR420」ですが、やはり一斉にかなりのハイテンションで報じられています。そしてどこもかしこも、「日本にはこういうクルマがほとんど無くなってしまった・・・」なんて付け加えて書かれています。MSアクセラやシビックtypeR、ブレイド(トヨタ)などいまでも街中でしばしば見られるモデルの販売が、現在はされていないことを悲しむと同時に、日本のお家芸までもドイツメーカーに持っていかれたことに対する不満もあるようです。しかしいつまでも「ドイツvs日本」なんて構図というのもナンセンスですし、そもそもドイツの得意技って何?って話です。メルセデスAMG「GT」なんて見るからにアメ車的な設計ですし、BMW i8なんて何らブランドのポリシーを反映できていない。アウディR8はもはや・・・ですし。ポルシェ911はドイツ車で括られる前に「911」なわけで・・・。

  もしVWがランエボの骨を拾っているならば・・・まあそれは結構なことだと思います。三菱にとってVWなどのドイツメーカーはターボチャージャーの納入先で大切なお得意様です。三菱自を破滅へと追いやったのは、もちろん自らの脇の甘さもありますが、マスコミに過剰なまでの三菱叩きをさせた謎の「巨大勢力」の存在があったのではないか・・・という陰謀論も囁かれます。しかしもはや信じられないかもしれませんが、ドイツでの品質信頼度における上位3ブランドは、ポルシェ、三菱、マツダです。日本では三菱のリコール隠しというモラルハザードが声高に叫ばれましたが、三菱と同じような状況は他のメーカーにも相応に起きているのに、三菱ばかりが日本中で知られるくらいまで繰り返し報道されました。同じ時期に故障を原因とした死亡事故はトヨタにおいてもホンダにおいても実際は三菱以上に発生しているわけです。

  なぜトヨタやホンダは追求されないのか?という声は当時からもありました。そして三菱が「生け贄」になってくれたおかげで、日本メーカーの多くがコンプライアンスを改めて連日のようにリコールを出すようになりました。「最近のホンダはなんかリコールが多くない?」なんてニューモデルマガジンXでも散々に書かれていましたが、それはね・・・三菱が生け贄になったからだよ!という側面もあるはずです。そんな三菱の「怨念」をも背負ったVWが、トヨタやホンダそして、三菱を完全に喰いものにしたメルセデスに対して制裁を加える!はちょっと言い過ぎかもしれませんが、なんとも興味深い話です。トヨタ&レクサスの全てのモデルよりも、ホンダの新型「シビックtypeR」よりも、そして「メルセデスAMG・A45」よりも速い超絶マシン「ゴルフR420」が日本に降り立つのを楽しみにしたいと思います。

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2015年6月22日月曜日

レクサスRC 「ナイスなリアデザインは◎」

  雑誌「Pen」が6/15日号で「スポーツカー&腕時計」の特集を組んでます。やっぱりムダにマニアックでどこか貧乏臭くて、編集部の青息吐息感が伝わってくる専門雑誌と違って、高所得者に狙いを定めた総合誌の完成度は凄まじく高く全くといっていいほど「隙」がないですね。これが「カーグラフィック」の半額で買えてしまうのだから、自動車専門誌はたまったもんじゃないです。

  何が違うか?と、言われるとちょっと難しいですけど、決定的な「差」は全ての写真に味わいがあるところですかね。自動車専門誌の写真はなぜかテンションガタ落ちになるケースが多いです、イベントで広場に同じ種類のスポーツカーがズラッと並んでいるショットを見せられても、たくさん居て壮観!ってことなんでしょうけど、全くもってオーナー目線では要らない絵面じゃないですか?

  それに対して「Pen」は海外オーナーを精力的に取材していて、その一人一人が老若男女問わずに、いい表情しているナイスな「カー・ピーポー」ばかりです。もちろん彼ら彼女らの愛車もスタイルからカラーリングまでこだわり抜いたセンスの光るものばかりなので、思わずため息が出ますね・・・。オペルGTのようなヒストリカルなクルマもありましたが、マツダロードスター、テスラロードスター、メルセデス300SLなどなど・・・それなりにコンテンポラリーで、いわゆる超絶スーパーカーに分類されるようなクルマばかりです。ロードスターも日本よりアメリカの景色に馴染むことがよくわかりましたよ・・・。

  写真を見ただけで全くの恐縮なのですが、やはりクルマは「個性」であり「存在感」が重要なんですね。確かに「走り」も必要でしょうけど、その気になればオーナー自身が手を加えて物理的に高いレベルのクルマに仕上げていくことは可能です。それよりもノーマルの段階で十分にゾクゾクするようなデザイン上の「存在感」が欲しいですね。そしてそんなクルマを手に入れちゃうと、もう手放せなくなってどんどんとコレクションが増えていってしまうかもしれないですが、土地が安い過疎地域にセカンドハウスを建ててでも、そういうクルマ道楽をやり遂げたいですね・・・。現在の所有車「GHアテンザセダン・ホワイト」は、私のコレクション第1号に相応しい「存在感」を放っていまして(オーナーバカです)、2台目は何にしよ〜かな〜!

  もし今、宝くじが当たってコレクションを増やせる!としたら第2号は何にするか? とりあえず現行市販車なら「レクサスRC」「フォードマスタング」「ポルシェボクスター」の3台がいいですね。いずれも20年くらいは余裕で愛せそうな美しいデザインに仕上がっていると思います。クルマの実力も加味したら「日産スカイライン」「ジャガーXE」も良さそうですが、少々デザインが小さくまとまってしまって「華」がない気もします。

  スカイラインやXEはあくまでセダンなので、RC、マスタング、ボクスターといった2ドア勢と比べられるとキツいかもしれないです。クーペやスポーツカーに比べてセダンのデザインは万人ウケする穏やかなテイストが強制されます。さらに相対的に高くなってしまう車高こそ、年々大型化する中で伸び続ける全長でバランスは取れていますが、今度は逆にサイドのデザインが間延びした印象になるのが、現在のセダンのツライところかもしれません。現行の「アテンザ」もサイドの間延び感が一長一短といったところで、「あくび」が出そうなダルさを感じます。もちろんマツダの下位モデルと一線を画す壮観なサイドラインという捉え方もあるでしょうが・・・。

  「レクサスIS」はちょっと凝り過ぎたボディラインが経年とともにウルサく感じられてきました。そろそろ360度のデザイン一新(フェイスリフト)なんてのもいいかもしれません。元々のシルエット自体は悪くないですし、メルセデスCLAやCのややふざけた(下品な)ウェーブ感に比べれば、まだまだ鑑賞に十分耐えられるレベルではありますが・・・。

  全くの余談ですが「CLAシューティングブレーク」のシルエットはいかがなもんでしょうか? 発売前からすでに齟齬(風化)が始まっているプレミアム新型車は久しぶりですね・・・。ただしこのクルマが目指すニーズも何となくわかるんですよね・・・既存のCセグワゴンからの変化球として、「ミニ・クラブマン」「サイオンxB(カローラルミオン)」のような西海岸テイストの「チョイ悪オヤジのプライベートカー」を狙っているのかな?

  CもCLAもウンザリ!と言ってみた所で、メルセデスは日本のオヤジ好みをガッチリ掴んでいるようで販売は好調です(ダサいオヤジが多い日本・・・)。メルセデスCLA-SBだけでなく、もはやプレミアムブランド全体から「チャラさ」みたいなものを感じます。マーケット的にそれが正解!だというならば、それはメーカーの自由ですけども、「そんな3年で買い換えさせるデザイン」には全く興味が惹かれないですし、少々不謹慎ですが、そんなクルマにドヤ顔で乗っている人々を見て、失笑してしまう気持ちが顔に出ないようにいつも我慢してます。

  そんな「プレミアム=チャラい」という潮流に逆らっている?と感じるのが、「レクサスRC」ですね。まるでスバルのデザイナーがゲスト参加した?かのような「硬派」なテイストを随所に感じます。ボンネットで直線を表現する点や、シンプルに機能性を追求したライト回りの造形、そしてGTウイングも似合ってしまいそうな愚直でヤンチャな佇まいは、スープラ、シルビア、FTOあたりのスポーツカーデザインが好きだった層も素直に好意的な評価を下してくれそうです。レクサスISから「スピンドルグリル」と「ヘッドライト下のLED」といった「刻印」をそのまま受け継いでいますが、クルマの雰囲気はだいぶ違ったものになっています。

  こういった特徴だけだったら、まあ凡百の2ドアクーペ(4シリーズやA5)と大きな差はないのですが、このレクサスRCは各部の愚直な作り込みによって「ガキっぽさ」を見せますが、そこから見事なまでに「グラマラスなリアデザイン」によって昇華させています。トヨタの開発者(オッサン)が童心に帰って愚直にデザインしたであろう各部に、なんだかイジらしいものを感じて「こういうの喜ぶ人多いよな!」なんて散々上から目線で鑑賞したあとに、そこからは想像が出来ない「アダルトなリアデザイン」を見せつけられて「昇天!」してしまうという、「デザインの振り幅」が実に見事です。

  BMWファンや自動車評論家は、口々に「RC」は「4シリーズ」の焼き直しと言っているようですが、もしBMWにこんなセクシーなリアデザインがあったならば、もうとっくの昔にメルセデスを葬って、アウディにもレクサスにも付け入る隙すら与えない完全無欠のプレミアムブランドになっていたと思います。私が知る限りではBMWの秀逸なリアデザインは、先代6シリーズだけですね・・・。もしかしたらこの「RC」はレクサスデザインがBMWほかを打ち破った画期的なデザインとして長く後世に残るかもしれません。ちなみにノーマルの主張するデザインのリア・エアダクトではなくて、「RC-F」のさりげないタイプがいいですね。

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2015年6月13日土曜日

フォード・マスタング 「スカクーを上回るコスパは大歓迎!」

  言うまでもなく「フォード・マスタング」は、初登場から50周年を数えるアメリカを代表する伝統モデルの「マッスルカー」です。本国では北米ビッグ3を中心に「5L・V8」くらいのやたらとデカいエンジンを搭載した「男らしい」ビッグクーペが人気のようで、いよいよアメリカがナンバー1の産油国になったこともあり、業績が改善している北米メーカーでは大排気量モデルの開発がすすんでいるようです。もちろんこれらマスタング、カマロ、ダッジ・チャレンジャーなどは、日本よりガソリン価格が相当に安いアメリカ限定のクルマに過ぎず、日本ではマニア向けに細々と正規販売が続けられている程度でした。

  このブログでは、日本で楽しめるであろうクルマばかりを選んで掲載するというポリシーだったので、これらのクルマはほとんど話題にも挙げませんでした。特大サイズの車体で、しかも5Lの「ガス喰い」をオススメです!と絶賛したところで「誰得?」って感じです。しかしこのマスタングもいよいよ欧州でも発売することになり、詳細を見てみると「日本でも十分に使える」クルマに生まれ変わりました。昨今では日本車もドイツ車もスタイル優先で車幅が1800mmを大きく超えるようになりましたので、マスタングのようなアメリカンサイズもそれほど気にならないです。日本の道路も日々改良が進んでいますし、そもそもアマゾンなどのネット通販を担っている「いすゞエルフ」(幅1920mm)があちこちの細い道路に入っていきますから、最初からサイズはそれほど問題ではなかったかもしれません。

  今回のフルモデルチェンジは、マスタングの本質を大きく変えるもの!だとして賛否両論巻き起こっていますが、とりあえず「内外装の高級化」「4気筒エンジン」「右ハンドル」という大きな「3本の柱」によって、とても日本で乗りやすい(所有しやすい)クルマになったと思います。裏を返せば先代マスタングの価格に魅力を感じていた人々が手を出さなかった理由のほとんどがこの3つだったのではないでしょうか? もちろん中には「左ハンドル」に憧れを持つ人もいるでしょうけど、失礼ですがもはやそれは80年代90年代に生きた人々の価値観であって、現代においては「右ハンドルが無い」=たいして魅力がないクルマと同意義になっています。1億円以上する僅少生産のオーダーメイド車でもハンドル位置を選べる時代です。日本・イギリス・豪州以外にも南ア・タイ・シンガポールなど右ハンドル国の購買力は無視できない時代です。

  輸入車でも小型車となると車幅が十分ではなく右ハンドル化で大きな問題が生じることがあるようです。フランスの小型車(プジョー208、シトロエンC3)などはハンドルの軸がシートの中心からかなりズレていたりするケースもあるので、左ハンドルを指名買いすることの意義は否定しません。某ドイツプレミアムブランドの最下級モデルの日本販売では右ハンドルのみに制限されますが、これが難物でシートとハンドルの取り付け位置に若干角度が付いていて、わずかながら外側に向かって座らされているように感じます。なんじゃこりゃ?完全に日本をナメているのでしょうか?ちょっとイラっとしますが、これはもう黙ってスルーするしかないですね。小型ハッチバックなのにFRという設計に少々無理があったのでしょうか? やっぱり輸入車のハッチバックから選ぶならば、ベストセラーのゴルフがいいと思います。右ハンドル車でも全くといっていいほどに運転環境に違和感はありません。まあ日本車では当たり前のことですけどね。

  マスタングの右ハンドル車は年内にも発売されるようですが、まだまだ映像でも見た事がないですので全く具合は判りません。実際にどれくらい違和感が出て来るのでしょうか? しかしフォードが右ハンドルで導入している小型モデルのフォーカスとフィエスタもゴルフの右ハンドルに匹敵するくらいに運転環境で全く不満はないので、プロペラシャフトの関係でFRの設計はなかなか難しいとはいえマスタングのサイズならば、よっぽど雑な仕事でも無い限りは上手く作ってくれるのではないかと思います。

  外装デザインに関してはいろいろ意見があるようで、ネットの掲示板などでも相当に叩かれていて、中には「これはアメ車ではない!日本車だ!」みたいな激しい原理主義者の声も聞かれます。アテンザ、スカイライン、レガシィとそれらに影響を与えたであろう「和田アウディ」のようなクールで端正なデザインにまとめられ、たしかに美しさこそありますが、従来の奔放で日本の道路では完全に浮いてしまうようなマスタングらしい過激な個性はやや弱まりました。日本に正規輸入されていないフォードの主力セダン・フュージョン(欧州名モンデオ)に準じたルックスで、フュージョンの2ドアクーペ版といった位置づけといってもいいかもしれません。セダンはFF、クーペはFRという作り分けはユーザー的には歓迎ですけどね。

  マスタングのデザインの元となったと思われる4ドアセダン「フュージョン」は、現行モデルが3年前に北米で発売されてすぐにデザイン面での進歩が絶賛され、北米カーオブザイヤーでもトップ3に選ばれました。そしてその後の北米市場での活躍は目覚ましいものがあり、カムリ、アコード、アルティマの3台合計で月間10万台以上を売り上げていた日本車勢の分厚い壁を見事に打ち破り、3台それぞれから5000~7000台程度のシェアを奪って「4強」の構図に持ち込みました。北米雑誌の中でも、「フュージョン」「マツダ6(アテンザ)」の2台のイケメンセダンが新興勢力となってミドルセダン市場が塗り変わるかも?なんて予測がされていました。ちなみにアテンザも北米では絶好調だったレガシィB4を台数ベースで追い抜くなどシェアを伸ばしています。

  フュージョンとマスタングはFFとFRでシャシーが全く違うので、スカイラインとスカイラインクーペのような関係とはちょっと違います。昨今のFFセダンでは静音設計が美徳ですが、FRクーペのマスタングは全く違うキャラクターで、走らせると荒々しさが伝わってきます。エンジンも横置きと縦置きで簡単には共有できないので、走りに関してはほぼ別のクルマです(だと思います)。北米でのフュージョンの人気の秘密にはエンジン・バリエーションもあるそうで、ジャガーランドローバーでも広く(イヴォーグ、XJ、XF、XE)使われているマツダが開発したMZRエンジンの「2.0Lショートストローク直4」(先代ロードスターに使われたもの)に、フォード自慢の「エコブースト」(ターボチャージャー)を組み合わせて240psにしたものと、アトキンソンサイクル(吸排気システム)を付けた自然吸気(141ps)のもの、さらにハイブリッド化したものまで用意されています。

  マスタングにもいろいろエンジンを選ばせてくれても良さそうですが、やはりスポーツクーペらしく、300ps越えのパワフルなエンジンしか使いません!ということのようです。とりあえずベースエンジンはこちらもマツダ製のMZRエンジンをベースとした「2.3Lロングストローク直4」にターボチャージャーを2気筒ごとに装備したツインスクロールターボです。かつてスカイラインGT-Rは直列6気筒のRB26に、3気筒ごとに過給するツインスクロールチャージャーで世界の頂点に立ちましたが、マスタング用の直4の新型ユニットもそれと同じようななかなか手の込んだシステムを使っています。

  最近ではBMWがM3/M4で直6に同様の「ツインスクロール」を採用して431psを捻り出してます。ターボチャージャーを2機使ってコストを掛けることで、ポンピングロス(吸排気時に消費されるエンジンパワー)を合理的に低減させて、どうやら高出力&良好燃費が両立するようです。M3の12.2km/Lは3Lツインターボとしては驚異的です。マスタング用のエンジンもどうやらこの水準を視野に入れていたようで、圧縮比をガソリンターボとしては異例の11.5まで引き上げる予定だったようですが、どうやら9.5に落ち着いたようです(旧マツダのベースがNAで9.7なのでこれでも健闘ですが・・・)。もちろん圧縮比だけでエンジンの性能が決まるわけでもないのですが、技術水準としてドイツ勢(VW、メルセデス、BMW)が軒並み10.0~10.3くらいを出しているので、一気に11.5で抜き去ってほしかったですが・・・。NAのガソリンでもディーゼルターボ(これは逆に下げるのですが)も理想値と言われる14.0を達成しているマツダが、今度作るガソリンターボは一体いくつになる?

  ちょっと横道に逸れましたが、エンジン技術に関してはどうやらBMWのM3/M4の前にまだまだ歯が立たないようですが、マスタングの車両価格はM3の半額以下ですからこれは仕方の無いことだと思います。現実的に同価格帯のライバルで年内に発表される予定の「インフィニティQ60」(スカイラインクーペ)と比較したときに、300ps超のスペックを考えると、このマスタングはいよいよ「快挙」達成したのではないかと思います。日本を代表するラグジュアリークーペが北米価格で買える(コスパ抜群!)ということで、根強いファンを持つ「スカクー」を脅かす存在になったんじゃないですか? 

  いまではネットでいくらでも情報が引き出せますから、雑誌が書かなくても米国のmotor trendのHPを読めばなんでも判ります。そんな情報社会が今回の初回限定350台が1ヶ月でソールドアウトし、200台の追加発売が決まったという異例のスマッシュヒットを可能にしたと思います。マスタングの伝統なんてあまり興味はないけど、先代までのイカツイ外装が一気にスタイリッシュになり、いかにもアメリカの大衆車然としていた内装も、日本のハイソカー(カムリやアコード)と同等かそれ以上の水準まで引き上げられました。

  インパネスイッチなどの先進デザインには好き嫌いがありそうですが、個人的にはとても気に入りましたし、レクサスやBMWのようなインパネを見飽きた人々にとってはとても新鮮に感じます。もし今が買い換えのタイミングで、ゆったり乗れてしかもそれなりに楽しめる3BOXを探していたならば、レクサスもBMWもアウディもスルーしてフォードに行ってしまいたくなる人の気持ちはとても良くわかります。そしてなんといっても実車がもの凄くキレイです!塗装・組み付けの様子を見ればレクサスRCの10倍くらい感動しますよ!

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↓福野礼一郎氏と畑村耕一氏の「2枚看板」のコーナーがどちらも「新型マスタング」のレビューをしています。福野氏はやや辛口で、マツダエンジニアだった畑村氏はマツダエンジンの晴れ舞台に感慨深げです。


  

  

2015年6月3日水曜日

BMW1シリーズ・MC 「外見はゴルフ、中身はポルシェ・ケイマン!」

  俗に「羊の皮を被った狼」と形容される高性能車は、日本では今も昔も根強く好まれていると思います。ホンダやマツダなど西日本に本拠があるメーカーはやたらと派手な高性能車を作る傾向にある一方で、東日本のメーカーはスバル・三菱・日産には地味なエクステリアで高性能!というモデルを作ってきました。歴代のエボやインプのように巨大なリアスポイラーが付いていても「羊の皮を被った」になるのかよくわかりませんが、富士重工や三菱のファンは、ある種の哲学を全うしてきたこれらのブランドに深い愛着を持ち続けてきました。見た目はごくごく一般的なスモールカー(Cセグ車)なのだけれども、エンジン出力は300ps以上でその走りはCセグサイズのスポーツカーの頂点を極めるポルシェ・ケイマン/ボクスターをも凌ぐ・・・そんなクルマへの憧れは今もなお続いています。

  スバルや三菱は「300psのスモールカー」という設計を成立させるためにAWDが必須という結論ありきで開発を進めてきました。誤解を恐れずに「日本発」と表現してしまいますが、どちらもその人気は国内にとどまらず、WRCでの活躍を背景に自動車先進国が集まる欧州でも高い評価を受けました。そもそもバブル期に作られた日本のスポーツカーは軒並み絶賛され、ホンダNSX、S2000、インテグラtypeR、シビックtypeR、マツダRX-7、トヨタMR-S、日産240SX、スカイラインGT-Rなど全方向的に活躍モデルがありました。その中でも欧州メーカーには技術面でなかなか真似できなものが、エボとインプの「AWD&ターボ」というストリートで圧倒的な戦闘力を発揮するタイプでした。

  「インプレッサSTI」と「ランエボ」に対抗できるだけのAWDシステムを使ってスポーティに仕上げた欧州ブランドは2001年の段階ではアウディだけで、それもDセグのA4アバントをベースとした1800mmというワイド仕様で、余裕のあるシャシーを使って6気筒エンジンを使うというものでした。単純にV6ターボで380psというスペックは当時は欧州にも正規輸入が行われていたスカイラインGT-Rに匹敵するかなり強烈な直線番長モデルでした。たしかに見た目はただのワゴンでまさに「羊の皮を被った狼」でしたが、日本での販売価格はおよそ1000万円にもなっていて、これはインプやエボの3倍近い価格ですから、「羊」じゃなくて「シマウマ」くらいだと思います。しかしこのアウディ「RS4アバント」から日本式(エボ&インプ)を模した高性能スモールカー(ジャパンスポーツとか名付けたい!)の開発が欧州メーカーの間でも盛んになり、さらにターボ技術が欧州車の間で広まったこともあり、アウディ以外のメーカーからも次々と発売されるようになりました。

  スバルと三菱が大切に育ててきた「羊の皮を被った狼」的なジャンルですが、残念なことに現在では完全に欧州メーカーに乗っ取られてしまった感があります。今ではこのジャンルを代表するモデルとして語られるのは、「ゴルフR」「メルセデスA45AMG」といった富士重工&三菱を踏襲したAWDタイプのものと、FRシャシーを生かしたBMWの「M135i」がそれぞれに妙味がある価格で販売されています。RS4アバントが1000万円した時代から10年以上が経過して、今ではゴルフRやM135iならば600万円前後まで乗り出し価格が下がっています。これを安いと見るか高いと見るかは意見が分かれるところでしょうけど。

  0-100km/hの加速が公式で4.9秒にまで引き上げられた、ビッグマイナー後の「M135i」の狙いはいよいよ、ちょっと大げさかもしれないですが、「ポルシェを猟るハッチバック」への大いなる脱皮にあるようです。今回は200万円台まで本体価格を下げたベースグレードを投入し、若年層の取り込みを図っているようで、ハイスペックなトップグレードを広告塔にして、ベースモデルを大ヒットさせるという戦略は、バブル期のシビックや日産パルサーを彷彿させます(といってもドイツブランドの定番の戦略になりつつありますが・・・)。

  BMWが日本の若者の関心を再びクルマへと向けるような展開をしている?かどうかはわかりませんが、BMWが作ればEVもディーゼルも注目されるようになってその力をまざまざと見せつけたのは間違いないです。相変わらずの偉大なブランド力と熱心なファンを維持する理由は、下世話なプロモーションではなく、クルマ作りにおいて常に高いアベレージを達成してくる姿勢は今も素晴らしいと思います。日産、ホンダ、マツダといった技術自慢の日本メーカーが続々とBMWのモデルを名指しでベンチマークしてきます。日本メーカーの技術力を前面に打ち出した「飛び道具」主義に対して、BMWがやや劣勢に見えることもあるのですが、雑誌の企画などで複数のメーカーのモデルを乗り比べて、なんだかんだで総合的に高得点を獲るのがBMW車だったりします。これって結構素晴らしいことじゃないですか。

  日産もマツダもホンダも国内市場では大きな影響力が発揮できないポジションに甘んじています。いずれも新興国向けモデルの拡充を図って将来の基盤を作ろうとしていますが、日本でおなじみの中型モデルは日本でも欧州でも大きな進展は見込めず、次世代の展開は全く見えてこない状況です。付加価値の高い中型車が生き残るためには、主要市場で「BMWに勝つ」ことが必須で、どうしても「飛び道具」を頼みにした開発になってしまう実情があります。しばしば日本メーカーの継続性の無さがBMWのようなブランド構築を阻害していると言われます。確かに日産の直6は消え、ホンダの自然吸気Vテックもマツダのロータリーも完全に引退モードになっています。

  BMWもまたVWグループによって本国ドイツから追い出され気味であり、自慢のマルチシリンダーを引っさげて「最後の楽園」である北米で確固たる地盤を確保しようと奮闘しています。VWゴルフが全く相手にされていないように、欧州のクルマ文化が全く通用しない中で、BMWらしさで独自の市場を築こうとする「攻めの姿勢」を日産、ホンダ、マツダも見習ってほしいものです。たしかにアメリカでは、日本流の「羊の皮を被った狼」は全く人気がないようで、1シリーズそのものがラインナップすらされていません。しかしBMWが日本の為にわざわざ右ハンドルで作ってくれている、しかも日本車への深いリスペクトが感じられるこのモデルを、マイナーチェンジでさらに大きく進化させたBMWに、日本の自動車ファンとして最敬礼の気持ちでいっぱいです。ぜひ皆様も一度お試しください。

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