新型ティアナが日本のセダンを変えるのか?

  ホンダ・インスパイアの日本撤退があったり、マツダ・アテンザのブレイクがあったりと、ミドルサイズのFFセダンを巡る環境はとても流動的だ。未だに根強いFFへの「偏見」もあるような気もするし、一方でFRよりも雪道を走行しやすいという決定的な長所もある。アメリカではミドルサイズ以上のセダンもFF車の方が圧倒的に売れる。3.7LのV6エンジン積んでいるFFなんて日本では、ハンドルがかったるくて売れないようだが、アメリカではよく売れるらしい。おそらくアメリカがとても広くて、山が少なくてカーブが少ないからでしょうか。

  今度FMCを迎えるティアナの歴代モデルは日産のセダンの中では最も革新的でした。フーガやスカイラインといったFRの高級モデルに対し、FFの高級車の販売は苦しいだろうという開発側の危機意識がよく表れていました。その結果、FRよりも広い車内空間を上手く使い、当時はレクサスにもなかった助手席のオットマン(飛行機のビジネスクラスのようなリクライニング)オプションが設定されたりしました。日産はこのティアナで、トヨタが上手くできなかったアメリカ向けセダン(カムリ・ウィンダム)の日本導入をあっさり成功させわけです。

  このクルマは頭の固いカーメディアからは不人気車の烙印を押されているが、ラグジュアリーという概念を日本のセダンに植え付け、クラウンやレクサスの装備を飛躍的に向上させた画期的な存在でした。実際このクルマのオーナーの満足度は非常に高いものがあります。サイズが大きくてもFFでもティアナが良かったと思って買ったお客さんのこのクルマへの愛情はとても深くなるのは当然なことです。日本に合ったサイズでFRで作られている現行スカイラインよりも販売が好調なくらいです。アテンザやカムリHVが大型化しFFのままで現在、日本でヒットしているのはこのティアナの存在があったからだと思います。

  さて今年発売されるティアナはHVが間に合うのか来年になるのかまだ不明らしいです。これも日産の戦略でライバルが多い現在の状況でHVを出すのではなく、レクサスISのカタログ燃費が出た後で、ゆっくり調整し直してから出した方が得策と考えているようです。先代のティアナユーザーからの乗り換え需要もまだまだ先なので、フーガのようにHVを後から追加して話題を集める作戦になりそうです。

  日産の新型デザイン(ティアナ・スカイライン)はマツダやトヨタのような「キャッチー」な方向へ転換するのではなく、完全に逆の方向を向いている。良く言えば上質、悪く言えば古臭いデザインになっています。この逆張り戦術がどうなるかは、販売が始まらないとなんとも言えないです。ただこのデザインが現在の北米の主流であり、その市場で影響力を強めているヒュンダイの上級セダンと共通点も多い気がします。さらに日産は韓国市場にもこのクラスのセダンを投入してるので、北米・中国・韓国での戦略に重点を置いているようです。逆にいうとトヨタの新型クラウンのデザイン変更はヒュンダイ車よりもさらに「アヴァンギャルド」に振れてしまっているということになりますね・・・。

コメント